高齢者は筋肉をつけることが重要といわれていますが、若いころのように運動をすればいいというわけではありません。
そして、毎日食事をしっかりしていても、筋肉を作る成分が摂れていなければ、どんどん筋肉は減少していってしまいます。
そこで、高齢者が筋肉をつけるために必要な栄養素や食材、食事についてお話ししていきましょう。
高齢者は筋肉が落ちやすく、またつきにくくなっています。
それは、筋肉は合成と分解を繰り返しており、高齢になると分解の速さに合成が追い付かないために、結果として筋肉量は少なくなってしまうのです。
また高齢者の場合、骨折やけがなどで行動範囲が狭くなり、動きが鈍くなってしまうことでも筋肉は減少します。
特にこういった場合には、運動をするということが難しくなるので、筋肉をつけること自体が困難になっていくのです。
さらに、筋肉が減少したことで新たな骨折やけがを招くリスクも否定できません。
ほかにも、高齢者は筋肉が減少してしまう病気にもかかりやすいので、運動はもちろんのこと、普段からの食生活で筋肉をつける成分を補給することが重要です。
高齢者に限ったことではありませんが、筋肉をつけるために必要な栄養素といえば、「たんぱく質」です。
血液や筋肉、骨などの体を作るために必要なたんぱく質、普通に食事をしているだけでは、高齢者の場合若干少ないといわれているので、意識してたんぱく質を摂ることが重要なのです。
筋肉の合成に欠かせない成分がロイシンです。
たんぱく質は体内でアミノ酸に代わりますが、そのアミノ酸の中でも体内では作ることができない必須アミノ酸9種類あります。
その中でもロイシンは、筋タンパク合成促進が期待できるということからも、たんぱく質の重要性はわかっていただけるでしょう。
たんぱく質が筋肉をつけるために重要とわかっていても、効率よく摂取するタイミングを知っておかないと、高齢者の場合には効果が期待できなくなる可能性があります。
高齢者だけではなく、若い世代の人にも共通することですが、たんぱく質を効率よく摂るタイミングは、運動後が最適といわれています。
運動後は筋肉が疲労し、アミノ酸を吸収しようとしているので、そこで補給することがベストといわれています。
運動直後の食事はちょっと抵抗がある場合には、運動後45分以内の食事を心がけましょう。またこれは大前提ですが、食事を3食きちんと食べて、食べすぎに注意することも意識しましょう。
高齢者が筋肉をつけるためにはロイシンが重要ということはわかりましたが、ではどんな食材にロイシンが多く含まれているのでしょうか?
ロイシンが多く含まれている食材としては、まぐろ(赤身)やかつお、鶏もも肉と胸肉、鶏卵、牛肉。牛乳、さんまや高野豆腐などがあります。
どれも特別な食材ではないので、普段の食事に取り入れることは難しいことではないでしょう。
ロイシンを多く含む食材を使ったメニューとしては、鶏肉の照り焼きや南蛮漬け、高野豆腐の煮物、肉じゃが、サンマのかば焼き、茶碗蒸しなどがあります。
特に茶碗蒸しは柔らかく、食べやすいので高齢者の食事としてはおすすめです。
もちろん、こうしたロイシンを多く含む食材を使ったメニューは適しているのですが、食事全体のバランスということも、高齢者の場合には重要になります。
主食・主菜・副菜をそれぞれバランスよく取り揃えることで、たんぱく質が効率よく体内に吸収され、筋肉の合成を働きかけてくれるでしょう。
食材を単体で摂取するよりも、他の食材と組み合わせることでより多くのたんぱく質を摂取することができるのです。
調理済み食材サービスについては御存じでしょうか?
これは高齢者用に食べやすく加工した食材を使い、一食分を調理してある食事サービスなのですが、栄養バランスや食べやすさにおいて非常にすぐれた商品といえます。
高齢者の筋肉をつけるための食事を毎日工夫して作るのは、はかなり大変な作業でもあります。
それは、高齢になると、噛む力や飲みこむ力も弱くなるので、食材にいくつかの加工をしなければならないことが出てくるからです。
細かく刻む・柔らかく煮込む・とろみをつけるなど、その人の状態によって違った工夫をしなければなりません。
たんぱく質を効率よく摂取できる調理済み食材サービスを活用することで、時間短縮も可能になります。
食事は毎日のことですから、しっかり続けるという意味でも、こういったサービスは有効といえるでしょう。
高齢者施設でもこのサービスを導入しているところが増えてきています。栄養バランスの良さと食べやすさ、何より職員の負担軽減という点で評価が高いようです。
高齢者にとって筋肉をつけるということは、けがや骨折などのリスクを下げるだけでなく、心身ともに元気な生活を送ることができるということにつながります。
運動が大切なのはもちろんですが、そこにバランスの取れた食事を組み合わせることで、筋肉の合成と分解のスピードの差が少なくなるかもしれません。
調理済み食材サービスも併用しながら、おいしく、たんぱく質や栄養バランスを考えた食事を心掛けましょう。