老人食というと、飲み込む力が弱くなった老人が食べるものというイメージがありますが、ただ単に柔らかく作っておけばいいというものではありません。
老人食は作り方次第で食事摂取量が変わりますから、調理にも工夫が必要です。
老人食とはどんなもので、どういった工夫が大切なのか、豆知識として頭に入れておくと便利ですよ。
「老人食ってどんなもの?」と思っている人もいるかもしれません。
簡単に言ってしまうと、老人専用の食事ということですよね。
これは、高齢になると飲み込む力や噛む力が衰えて、味も感じにくくなることから、老人でも食べやすい食事のことを指すのです。
老人に限ったことではありませんが、食事というのは生命を維持するために欠かせないものですし、楽しみを見出すものでもあります。
年を取って、食事量が少なくなる原因として、食事が合わないことが挙げられるのです。
食事量が少なくなってしまうと、体調が悪くなりますし、余計に食事量が減って悪循環に陥ります。
元気になろうとしても必要な栄養が摂れないわけですし、1日3回の楽しみがなくなることは、精神的な衰えにもつながりかねないのです。
老人食を作る際にはまず、老人の食べにくい食材を知っておき、調理に工夫をすることが重要です。
例えば、高齢になると噛む力が弱くなるので、パサパサしたものが苦手になります。
噛むことも大変ですが、それを飲み込むということも実は難しくなっているのです。
パサパサした食材として、パンや高野豆腐、茹で卵の黄身など、口の中に入れると水分を吸収するものを指します。
老人は唾液の分泌も少なくなっているので、こうした食材を単体で口に入れるのは、危険であると言えます。
さらに口の中に張り付きやすい海苔や、ボロボロしやすいものなども同じことが言えるでしょう。
では、そういった食材は避けるべきなの?ということになりますが、そうではありません。
調理をするときに、ひと工夫をすると食べやすくなるのです。
高野豆腐の場合には、千切りにして卵でとじるといいですし、パンはパンがゆやフレンチトーストにすると食べやすくなります。
また、片栗粉を使ってとろみを付けるのもおすすめです。
市販のとろみ剤を使うと、とろみが付けやすくなるので簡単です。
どうしても噛む力が弱く、飲み込みも大変という状態になった場合には、とろみだけでは難しくなりますが、細かく刻む「刻み食」やミキサーにかけて形をなくす「ミキサー食」も一つの方法です。
ただし、この場合には、味付けのタイミングに気を配りましょう。
刻みやミキサーにする前に味を付けてしまうと、食品から水分が出て、味が薄くなります。
「あとで味を付けたほうがしっかりした味になる」ということを覚えておくと安心です。
調理した後に味見をしてみるというのも大切なことかもしれません。
老人食のレシピは、最近ネットでもたくさんのメニューを検索することができます。
食材で検索するといいですが、共通しているのが「柔らかく仕上げること」でしょう。
魚であれば蒸し焼きにしてふっくらさせる、パンは牛乳などに浸して焼く、あんかけにするなどの方法があります。
また、味付けはメリハリを付けることが重要。
薄味が良いからといって全部のメニューを薄味にしては、おいしく食べることができませんよね。
やはり食事はおいしく食べなければ楽しみがなくなりますから、一つのおかずにしっかり味を付けたら他は薄めにするなど、全体のバランスを考えて味を付けましょう。
そして意外にもマヨネーズは老人食のお助けアイテムです。
茹で卵の黄身をマヨネーズで和えれば立派なソースになりますし、焼き魚に使って全体をしっとりまとめることもできるので便利に使えます。
老人食を作るときに大変だと思う人もいるかもしれません。
「家族の分の食事を作るだけでも大変なのに、それとは別に老人食を準備するのはちょっと…」そう思う気持ちも理解できます。
食事は毎日のことですから、作る側が疲れてしまうと、楽しい食事ということにはなりません。
そこでレトルト食品を使うこともおすすめです。
スーパーやドラッグストアなどでも、最近は老人食のレトルト食品を数多く取り扱っています。
また、普通のレトルト食品を使って、刻みやミキサーにするというのも作りやすい方法と言えるでしょう。
レトルト食品を使うのは手を抜いていると思うかもしれませんが、レトルトにもおいしいものはたくさんあります。
手を抜いているのではなく、おいしいものを提供するのであれば、何の問題もありませんし、どんどん活用するべきでしょう。
また、老人食を初めて作るという人は、レトルトを買ってきて味見をすると、全体のバランスや味、硬さなどの調節がわかって便利です。
忙しいときの味方にもなってくれるでしょう。
老人食は特別なものではありません。
あまりに身構えてしまうと、作る側にも負担になりますから、どうやっておいしく食べてもらうかを考えながら作りましょう。
家族と同じメニューを食べさせたいと考えるのであれば、同じ食材でも調理方法を変えるといいので、いろいろ工夫してみるといいですね。
老人食に関しては、一般の方だけでなく、高齢者施設でもおいしいメニューを提供することに悩んでいるという声があります。
高齢者のためのおいしい食事を用意するのは、プロでも大変です。
調理済み食材や給食委託サービスの利用も、ぜひ検討してみてください。