少子高齢化社会が進む中で、老人ホームなどの高齢者施設に入居する方の数は年々増加傾向にあります。
家族を老人ホームに入居させる理由として、有資格者の専門的な介護が受けられるというのが一つに挙げられます。
その反面、食事面に不安を抱える方も少なくありません。
この記事では、老人ホームの食事のメニューの例や、どのように好き嫌いに対応していくかについてご説明していきます。
高齢者が老人ホームを決める際に「食事の質で選びたい」と考える家族も少なくありません。
高齢者の食事というのは、健康のために栄養を摂るだけでなく、食べる楽しみを感じて心の豊かさにつながる大切なものです。
近年、何歳まで生きたかを統計的に示した平均寿命のほかに、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を示した「健康寿命」が注目されています。
健康寿命が高齢者の幸せを左右するという関連性から、老人ホームで提供される食事の質はとても重要なものと考えられるのです。
そのため、最近の老人ホームでは多彩な食材を用いて献立を充実化させる取り組みを行っています。
コンビニエンスストアやフードデリバリーが普及する時代。
多様化する食へのニーズに対応すべく、老人ホームでは食事の献立に選択肢を設けているところも少なくありません。
全員に同じメニューを提供するのではなく、和食・洋食・中華料理など料理のジャンルを選べるようにしている老人ホームもあります。
また、「セレクト食」といって、何種類かのメニューから好みの1品を選択できるようにしているところもあります。
老人ホームの食事の献立とメニューの一例をみてみましょう。
≪朝食≫
・和食(A) ごはん/焼き魚/納豆/漬物/味噌汁
・和食(B) おかゆ/焼き魚/納豆/漬物/お吸い物
・洋食(A) コッペパン/スクランブルエッグ/ヨーグルト/紅茶
・洋食(B) 食パン/スクランブルエッグ/ヨーグルト/牛乳
・中華 ごはん/かに玉あんかけ/中華スープ
≪昼食≫
・和食(A) うどん/天ぷら/ほうれん草のおひたし/大福
・和食(B) そば/天ぷら/ほうれん草のおひたし/3色だんご
・洋食(A) パン/ハンバーグ/マカロニサラダ/ケーキ
・洋食(B) パン/グラタン/野菜サラダ/コーヒーゼリー
・中華 ラーメン/中華ナムル/炒め物/杏仁豆腐
・和食(A) おにぎり/和え物/焼き鳥/すまし汁/漬物
・和食(B) 炊き込みごはん/魚のフライ/野菜の煮物/すまし汁/漬物
・洋食(A) パスタ/エビフライ/コーンポタージュ
・中華 ごはん/エビのチリソース/シュウマイ
このように、バラエティに富んだメニューを用意することで、入居する高齢者が毎日を楽しく過ごしていけるでしょう。
老人ホームでの食事は、セレクト食だけでは飽きてしまいがちです。
そこで毎月、行事がある日には特別な「イベント食」を提供する施設が増えてきています。
例えば、1月のお正月にはおせち料理やお雑煮を、2月の節分には恵方巻きを、3月のひな祭りにはちらし寿司を振る舞うなどです。
入居者の誕生日やクリスマス、ハロウィンには施設内でパーティーを催すところもあります。
このようなイベント食の機会を設けることで、高齢者が毎日の食事以外にも生きがいを見出すきっかけにもつながるでしょう。
老人ホームにはさまざまな方が入居されますから、食事の好き嫌いや偏食があってもおかしくはありません。
施設ではどこまで対応するべきなのか悩むところでしょうが、一般的には入居者の希望にある程度応える必要があります。
とはいえ、あまりに栄養バランスが偏った食事を提供することは、入居者の健康面を考慮すると好ましくありません。
そのため、すべての要望に応える必要はありませんが、食事のメインとなる主食に関しては「ごはん」「パン」「麺」など最低限の選択肢を設けることを推奨します。
栄養バランスや健康面は無視できない問題ではありますが、入居者が喜ぶ料理を提供することが何よりも大切です。
どうしても苦手な食べ物がある場合、無理に勧めることはせず、別の食材で代用するか、あるいは調理方法を変えてみるなどの工夫をしましょう。
ほかにも、味が薄い・濃い、食事メニューが少ない、ボリューム不足などのクレームが発生することもあるため、適宜献立の内容を見直していく必要があります。
栄養バランスを考えた上で、老人ホームで提供する食事のレシピを考えるのが大変という施設の方は多いことでしょう。
高齢者の食事の用意で困っている老人ホームや特養老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅のご担当の方は、「給食委託」や「調理済み食材」のサービス会社の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
また「家族が老人ホーム等の施設利用を検討している」という方は、食事についてもしっかりと調べて、納得できる施設を選ぶようにしたいですね。